2014年11月11日
第1回イベントのレポート
■山崎さんのこと
ひめぶるの第一回目のイベントは、地元姫路で子育てにまつわる活発な地域活動のリーダー的存在の山崎清治さんに、「あそびゴコロ」についてお話しいただきました。
山崎さんが理事長を務められる、通称「生サポ」(生涯学習サポート兵庫)http://shosapo.iwish.jp/
は、身体を動かし、大自然や街に子供たちと一緒に直接面と向かうタイプの様々な活動が、特に子育て世代の方々には有名です。
中でも、もっともユニークな活動が、「チャレンジアイランド」と銘打たれた、子供たちの夏休みの無人島体験です。http://challenge.iwish.jp/ci/
既に8年も毎年継続されているこの企画。
食べることの意味。なぜ自然に感謝するのかなど、説教臭く言葉で伝える前に、子供たちが自分で遊びの中で、実感していくように考えられています。そのようすが、毎年テレビで放映されています。上記のホームページでもその様子がテレビ番組の動画でご覧いただけますので、是非見てみてください。
子供たちが、厳しい自然とのかかわりの中で、普段の自分の生活をふと見つめなおすシーンは、実に感動的です。
ということで、山崎さんはプロジェクターでその様子を映しながらお話になるのかな?
と思いきや、徒手空拳。体一つでお見えになりました。
■「あそびゴコロ」とは何か?
できないことが、できるようになっていく。それが面白いのです。それがあそびです。
山崎さんは、いきなり、会場の皆さんに、手の指を使ってのゲームをやりましょうと呼び掛けられました。挨拶なんかいらない。という感じです。
山崎さんのゲームは、最初はだれでもできそうな簡単なものでした。でもだんだん難しくなってきます。たとえば歌に合わせて左右の指で別々の数を数えるというように。ゲームが難しくなってくると、会場の皆さんにどよめきや笑い声が起こり始めます。隣の人に「できないよね。難しいね。」と話し始めます。
そこで、山崎さんが、おもむろに話しはじめました。
「最初、誰でもできる簡単な手遊びの時、みなさんの表情は、硬いままでした。歌の声も小さい。
でも、できそうでできない手遊びの段階になってくると、不思議と表情も和らぎ、声も出るようになって、最も違っているのは、周りの人とコミュニケーションを取るようになってくるということです。」
と話されました。
「できそうで、できないことが、できるようになってくるプロセス、それが「あそび」なのです。誰でもできることならつまらない。遊びにならない。やってみよう、今度はうまくやるぞ、そのプロセスの原動力が、「あそびゴコロ」なのです。あそびゴコロが動き始めると、表情も柔らかくなって、周りの人と、自然とコミュニケーションをとります。子供たちは、それを、実に素直に、ごく自然にできる。そして、いろんなことを学んでいくのです。」
なるほど、何気ないことに、すごくヒントがありそうな気がしてきました。山崎さんは続けます。
「コミュニケーションというものは、取りなさい!と言われて取るものではないし、取れるものではありません。
自分の感情が動いた時に、自然とコミュニケーションが戻ってくる。その感情の動き、素直な心の源泉が、「あそびゴコロ」なのです。」
あそびゴコロがなくなると、表情がなくなり、コミュニケーションがなくなる。社会の在り方そのものなんですね。
左から、旭ホームズ 桝社長
宮本住建 宮本部長 大松建設 松本専務
身野建設 身野社長 サンキュウ住建 蔭久社長
■「あそびゴコロ」のキーワード
失敗を見届けてあげること。
俄然、山崎さんの話が熱を帯びて、おもしろくなってきました。会場の皆さんも、食い入るようにお話を聞いています。
「失敗のチャンスということ。それが大事です。
遊びが勝ち負けばかりを気にするようになると、すでに遊びではない。大人にありがちな傾向なのです。遊びは、できそうでできないことが、できるようになっていくプロセスですから、なにより自分で考えて、工夫してやってみることも大事なんです。そのプロセスを「面白い!」と思える気持ち、それが「あそびゴコロ」だと思います。
勝ち負けばかりを気にしていると、勝たなければ面白くない、という発想になります。
そして、勝てない、おもしろくないと、それを遊びのせいにする。最近の子供たちは、自分に起こる事象を人のせいにする傾向があります。
もしかしたら、あそびゴコロの欠如も、その原因の一つかもしれませんね。」
なるほど、効率的に勝つ、合理化する、というゲームではない、もっとおおらかな、あそびゴコロの世界。大人は特に、忘れてしまったことかもしれませんね。
「おもちゃメーカーは、対象年齢という表示が大好きです。対象年齢ならば、その遊びはすぐできるようになって、つまらなくなってくる。
だから、新しく買う。メーカーはそれを企んでいるのだと思います。
だから、「こないだ買ってあげたばかりでしょ!」と言って怒らないで、もっと歯ごたえのある題材(おもちゃ)がいいのだと思います。
海外の木のおもちゃは、その点対象年齢が広い。よく考えて選んでみたいものですが、社会がなかなか許さない。難しい問題ですね。
また、親ならば、子供が失敗するのを、なかなか見届けられない。それも親心です。そこが難しいところ。だから、生サポのように、他人が関与することも大事かもしれません」
■「あそびゴコロ」のキーワード2
子供は、遊びを通じて「共感」を求めている。
「チャレンジアイランドや、その他のプロジェクトなどを通じて、子供を見ていると、子供は、本当は、遊びを通じて人との「共感」を求めているのだな、と思うことがよくあります。
勝ち負けや合理化ではない、世界です。
「○○○なー」といって、友達と顔を見合わせて話しているときの楽しそうな顔。本当に素晴らしいものです。あそびゴコロの本当の一面を見た思いがします。
一方で、その共感の機会を持っていない子供はかわいそうだということが、逆に心配になるでしょう。」
ここで、共感という新しいキーワードが出てきました。
実に納得できる話で、会場は、この話に、まさに共感している空気感に満たされました。
「そういうことを考えていると、一緒にご飯を食べて、”おいしいね”と共感することが、毎日のこととしてどれほど大事かわかります。」
「また、お祭りをはじめとする、地域の年中行事は、地域のみんなが「共感」することで、コミュニティーが力強くなることを、先人が教えてくれているのです。これは「チームビルディング」という組織論の基本にも しっかりかなっていることです。
一方で、昨今、地域コミュニティーが消えていくということが、よく言われるようになりました。
それは、やはり、共感できるものがなくなってきているということを意味しているのかもしれません。
地域コミュニティーというものは、理屈をこねて「作るべきです」、などと言ってもできるはずもない。
子供のころから、あそび、食、普段の生活を通じて、「共感すること」についての訓練を重ねていくことで、はじめて力強いコミュニティーができる。一人一人がそれを求め守っていく土壌ができてくるのだと思います。」
■「あそびゴコロ」のキーワード3
ありがとう・・・ その本当の意味をかみしめる。
共感というキーワード、これは心を打たれるものでした。何気ない毎日の暮らしのなかに、子供にとって、何より大切な要素が含まれている。
案外、気がつかず、ないがしろにしていることも多いかもしれません。会場がそんな雰囲気に包まれた時、山崎さんが言いました。
「それでは、質問です!
ありがとう の反対語はなんでしょう?」
ウーン 会場の皆さんは、一生懸命考え始めました。でもわかりません。何人か示されましたが、やっぱりわからない。山崎さんが終了~ と言って鈴を鳴らします。
「では、時間切れなので、答えを言います。
答えは、あたりまえです。」
なるほど!会場の皆さんが、膝を打つ感じがわかりました。
「 ありがとうは、身の回りのことを当たり前と思っていると、決して口から出てきません。
たとえば、毎日の食事。ごはんが黙って出てくるのが当たり前と思っていると、ありがとうの気持ちが育たない。私が、子供たちを毎年無人島に連れて行くのは、子供たちに「ありがとう」が言える子どもになってほしいからなんです。」
「ありがとうの力。
人に感謝し、自然に感謝する。それは力のあることです。そして、この意味での「ありがとう」が飛び交う空間が、コミュニティーなのだと思います。」
あそびゴコロ → できないことができるプロセス → コミュニケーションが生まれる。→共感が生まれる。→ 勝ち負けではない関係性 → 感謝の気持ち、あたりまえの空間からは「ありがとう」は出てこない。
会場の皆さんも、すっかり満足して、清々しい気持ちで帰られました。
実にいいお話し。山崎さん ありがとうございました。
今後とも、ひめぶる は、このような機会をつくって皆さんと共に学んでいきます。