2015年07月31日
第5回イベントのレポート
地元の海をもっと知りたい!
地元の現役漁師さん星尾国広さんのご厚意で実現した、海のイベント
ひめぶるの第5回イベント「地元の海をもっと知りたい!」を2015年7月4日(土)白浜海水浴場のイベントスペース「うみくる」で開催しました。
このイベントは、地元の現役漁師さん星尾国広さんのご厚意とご尽力がなければ、とても開催できませんでした。星尾さんは地元の小学校で、3年生の子供たちに海の生物の多様性をスライドの写真を交えて年二回、教えている実績を持っている人です。姫路の海はとても身近にあるのに、私たちは海のことは知らないことばかりです。そこで生活する人々のこと、歴史的な経緯、今海が、魚がどうなっているのか?などなど、調べてみると何もわかっていない。今回のイベントの準備中に、今回イベントの担当である、大松建設/松 本、コンフォート/黒田、宮本住建/宮本の各メンバーはそのことを改めて痛感したのでありました。
かつて高度成長の時代、全国の海岸線に重化学工業系の巨大コンビナートがおびただしい数作られていきました。瀬戸内は特にその利便性が着目され、埋め尽くすように巨大工場群ができました。1960年代までは、塩田(海水で塩を作る)が広がっていた姫路の海も、例外ではなく、コンクリートと煙突とテトラポットの海に変貌していったのです。また、市街化に伴って、生活排水の海への流入も加速し、姫路の海は「赤潮」の海、汚れた海になっていった経緯があります。
星尾さんは、その時代から海の浄化に関心を持ち、また、漁協で魚の乱獲ではなく、「育てる漁業」を推進してきました。今でも日常的に白浜海岸の浄化、清掃活動を行っている人です。
担当ひめぶるメンバー(大松建設/松本、コンフォート/黒田、宮本 住建/宮本)は、星尾さんに、姫路の海についていろいろ教えていただくことから、イベントの準備を始めました。
姫路の海の生き字引星尾国広さん。姫路のキース・リチャード
美しい砂浜が広がる白浜海岸
プランクトンの異常発生がもたらす赤潮。海中生物は窒息状態になり「死の海」と化す。高度成長期、全国で発生。特に瀬戸内海で漁業の壊滅的被害が頻発した。
最初は海についてのお勉強。星尾さんの海の生物大全集と姫路の漁業について
参加者、約40人が集合しました。広々とした一年ぶりの海を前にして、今にも駆け出していきそうな子供たちにちょっと待ったをかけてフリースペース「うみくる」の2Fで、少しお勉強です。
最初は、アマモの話、里海の話。いま、世界的に「里海」という言葉が、有名になっています。
工業化、都市化が急速に進んで、海の汚染が著しい場所が世界の各地にあります。それは、かつての高度成長期の日本と同じです。日本では、地元漁民らの地道な取り組み、工場排水の厳しい規制などのおかげで、海の水質を取り戻してき多実績があるのです。(これはあまり知られていないことですが・・・)
そして今世界が瀬戸内をお手本にしているのです。その合言葉が「さとうみ」です。自然と人間が共生して、持続可能な環境を、昔の人の知恵として受けついていく「里山」の作法は、誰もが知るようになりました。
同じような謙虚で持続可能な自然とのかかわりの模索が瀬戸内の漁師さんを中心にして、長年地道に行われてきました。
その作法は、「里海」と呼ばれて世界中の注目を浴びているのです。
そのポイントとなるのが、「アマモ」と呼ばれる海藻を海の中で生育することです。海の中にできたアマモの林は、海水の浄化作用があるだけでなく、様々な海中生物の産卵の場所になり、また幼魚の育つ場所になります。その素晴らしい効果を称して、アマモは、「海のゆりかご」と呼ばれています。
姫路でも、地元のダイバーさんが協力して、アマモの苗の育成や種まきを地道に行っています。また、地元の白浜小学校でも、アマモの種まきを授業に取り入れています。星尾さんも、その取り組みに連動している一人です。
まずは、地元のダイバーの会の方にご提供いただいた、海の中の映像とアマモの生育の記録を、みんなで見ながら星尾さんに解説していただきました。
アマモの苗を育てて地道に植えていく。全国で「里海」づくりの合言葉のもと、取り組まれている活動。
芽が育って、春には苗になった。波にながされてしまわないよう、苗をねんどやわりばしにつけて、海にうえるんだ。
少しずつ育っていくアマモの林。この林が、いろんな海中生物の「ゆりかご」になって、生物多様性が回復されてくる。
星尾さんが長年撮りためた、海中生物の写真まさに、生物多様性という言葉がぴったりです。
海の環境を地道に整える。この地道な取り組みの到達点として、海の生物の多様性の回復があります。
星尾さんくらい、毎日海に接している人でも、「海はまだまだ分からないことだらけだ」とおっしゃいます。
海は、人智をはるかに超えた豊かな世界。そのデリケートなバランスは、破壊するのは簡単でも、元に戻すのは実に難しい。だから、大切にしなければならないのです。かつて日本でも、海を「使い捨て」にするような、排水の垂れ流しが日常的に行われていました。水俣病をはじめとする、様々な公害病の悲劇も、その中で発生してきたのです。
いま、「里海」という合言葉が表す、海への作法は、持続可能な自然環境との共存です。「人間のわきまえ」が大切なのです。
ひめぶるでは、なかなか馴染みにくいこの話題を、連続的に発信していこうと、改めて考えました。
では、姫路の海の豊かな多様性(星尾さん撮影)のほんの一部ですが見てください。
コメツキガニ
ナナトゲコブシ
ヘイケガニ
カイカムリ
いかのたまご
ウミケムシ
ウミサボテン
ニシガイのたまご
海の生物のタッチプール。子供たちは大はしゃぎリアルな感触海の不思議満載!
豊富な画像を見て、海への興味が大いに盛り上がったところでいよいよリアリズムの世界!
星尾さんが夜中に漁船で採集してきてくれた、海の生物のタッチプールです。フリースペース「うみくる」の前庭に、様々な生き物を種類別においてくれました。どれもめずらしいものばかり。タコ、サメの子供、エイ、ウミケムシ、イカの卵と赤ちゃん巨大ヤドカリ、ヒトデ、ウミウシなどなど。
とくに、子供たちはタコの手づかみ感触に夢中になっていました。
特に普段、海から距離のある宍粟市の大松建設/松本のアテンドで来てくれた子供たちは、これを機会に海への関心を高めてくれたようです。
今後とも、ぜひ、山手の人たちと海辺の人たちの交流を深めたいと、松本メンバーは話していました。
プールの中を這いまわるタコの歩行を観察していると、それだけでも時間を忘れます。海はへの興味は尽きません。
星尾さんがやさしく子供たちに解説してくれるタッチプール。
初めてのタコの感触。おもしろいっ!
アタイはウミサボテンがお気に入り
サメの子供とエイもいるよ。
タコつかみ。もっとタコについて調べたるどー。
イカの卵から赤ちゃんがたくさん生まれてきた。
身をくねらせるウミケムシウヨウヨいる。気持ち悪いー。触りたーい。
食べて学ぶ。食で育てる。小松屋さんの味噌汁(オコゼのあら汁)天晴水産(あっぱれ水産)さんのシラス丼。
おなかもすきました。みんなで昼食。
みんながタッチプールに興じている間、地元白浜の老舗味噌屋さん(創業明治十年)の小松屋さんのご夫婦が、私たちのために味噌汁を作って待っていてくれました。
http://www.miso-komatuya.co.jp/(ネット販売あり)
小松屋さんはひめぶるメンバー宮本住建/宮本のご近所づきあいの仲。子供のころから知ってるよ。と言われ宮本さんもちょっとやりにくそうです。
老舗の味噌屋さんと、老舗の工務店ともに手作り感覚と地元コミュニティーを大切にしてきた仲通し。今回このようなイベントでコンセプトを共有できたことは何よりうれしいと宮本氏は話していました。これをきっかけに、いろいろネットワークが広がると思います。
小松屋さんは、糀の発酵プロセスにこだわって、手作業で丹精込めて味噌や甘酒を作っているお店です。地元の宝物。
当節、スーパーで売っている味噌は、発酵プロセスを省略しているという話もよく聞きます。つまり味噌じゃないかもしれない。だから防腐剤などの食品添加物もドサドサ入っています。
小松屋さんの味噌はせいろで作る糀、国産米100%、もちろん無添加のお味噌です。子供たちのために、ほんとに丹精込めて味噌汁を作ってくださいりました。感謝に耐えません。
また、地元妻鹿漁港の天晴(あっぱれ)水産さんにご協力を得て、釜揚げ直後のシラス丼を皆でいただきました。味噌汁も、シラスも、絶品です。
子供たちもパクパク食べる。添加物の変な味が一切ない、ピュアーな素材の味そのものなのです。お母さんたちもニコニコです。
当節、スーパーマーケットの普及で、街の魚屋さんのめっきり減りました。魚も切り身のものしか子供たちは知りません。
必然、食卓に地元の魚が乗ることも減ってしまいました。
しかし感謝して、地元の自然の恵みをいただく。
EAT ROCALLY(地産地消)。
そして、その環境を慈しみ、育み、共生する。これが子供たちに安全で体に良いことづくめの食材を提供する最善の方法です。
地元には、まだまだ豊かな食材があり、また人知れず地道に、かつ愛をこめてそれを提供し続けている人がいる。お母さんも、ひめぶるも、大いに学んだのでありました。
子供たちに愛をこめて味噌汁を作ってくださる、小松屋さんご夫妻。
天晴水産のシラス丼との絶品コンビ
うみくるでの昼食風景。
お母さん!おいしい!この瞬間ほどうれしいことはない。
スキムボードの第一人者大牧雅也さんのチームに教わる海の楽しみ方。スキムボードたっ楽しいぞー!
ご当地姫路は、スキムボードというサーフィンの新しいムーブメント発祥の地だそうです。スキムボードの日本への紹介者で、第一人者の大牧雅也さんのチームに、スキムボードの遊び方を陸上で教わりました。これが実に楽しいのです。参加者一同夢中になって、やりました。
フリースペース「うみくる」と白浜海岸の間にある芝生の前庭がスキムボード講習会の会場です。
芝生の上に、アクリルの波板を敷いて、ワックスを塗ります。
その板の上に置いたスキムボードに、助走をつけて勢いよく乗るのです。体はあくまで前を向けて。両足は前への推進力を損なわないように、やや斜めに。次は実際に海の上で挑戦したい!とみんな感じていました。大牧さんはほんとにやさしく、教えるのが上手な人。みんなが引き込まれていく不思議な魅力を持った人です。
砂浜から波に向かって駆け出して行って、波打ち際で波に乗るスキムボード。ボードもサーフィンに比べて小さなものです。それでも大牧さんたちは、3mの大ジャンプのようなアクロバットな波乗りをします。見かけによらずダイナミックなものなのです。ぜひ挑戦してみてください。詳しくは白浜海岸のプロショップ「ルースターテイル・フリーウェイ」まで。
小さな女の子にスキムボードの感覚を教える大牧さん。
みんな、だんだん上手になってきた楽しくて仕方がない。
かっこいい!髪をなびかせて、ライドオン
もうちょっと前にっ!と大牧さんおっとっと。
最後にみんなで清掃活動“ビーチクリーン”
楽しかったイベントも、そろそろ終わりに近づきました。
星尾さんや大牧さんなど、いつも日常的に白浜海岸の清掃活動をしてくれている人々に敬意を表して、みんなでビーチクリーンを実践しました。
案外、ゴミはあるもんですね。ビニール系や空き缶系の漂着物、花火やバーベキューの残骸など。20分ほどで山のようにゴミが集まりました。
皆、海への感謝の気持ち、清々しい気持ちを感じながら、少しだけ地元の海が身近になったような気がしました。
最後に、ひめぶるメンバーの大松建設松本、コンフォート黒田から、皆様に感謝のあいさつがあり、閉会いたしました。
ビーチクリーン結構ゴミはあるもんですね。
手分けして、海岸全体を清掃
ゴミを集めるひめぶるメンバー左からコンフォート黒田旭ホームズ桝、身野建設身野の面々。
ビーチクリーンのご褒美は小松屋さんの冷やし甘酒。暑い日の栄養補給にすごくいい。
これはほんとに美味い!砂糖を一切使わない糀だけの甘さ。実にさわやかです。