2016年06月30日
第8回イベントレポート
ついに、大工さんと木こりさんのコラボイベントが実現
「循環すること」の大切さを、みんなが実感しました。
長い間の調整を経て、宍粟の山を守り育てるグリーン興産さんとのコラボレーションイベントが実現しました。
山は、所有権という法律上の権利以上に社会全体の財産(コモンズ/社会共通資本)です。単に山主という個人の営利だけのために、山を自由にしてしまうことで、地域コミュニティー全体の調和が崩れてしまうことがあるのです。
山の保全によって、清冽で栄養豊富な水が川に流れ、その水が海に出て魚などの海中生物を育てます。海水は蒸発して雲になり、また山に雨を降らせて水が循環します。ダイナミックだが、一つでもバランスが壊れると調和が保てない、デリケートな循環のサイクル。壊すのはごく短期間でも、それを再生させることは、なかなかできません。
ですから、昔の人は、自然の恵みに感謝して、それを破壊しないために、「わきまえ」や「作法」を大切にしてきました。
それが自然と共生すると現代語で言われていることの本質です。
少し難しい話になりましたが、このようなバランスを保ち、地域社会全体の調和を保つためには、出発点である里山の保全がとても大事なのです。
保全とは、適切に木を切って、森の中に太陽光が差し込む環境を作ることです。つまり長年にわたって手間をかけること。
しかし、地域の人の生活が山の木と無縁になっていけば、誰も山の保全に手間をかけられなくなり、必然的に山は荒れ放題になって、下流の自然環境や調和も崩れてしまうのです。
グリーン興産さんが手塩にかけて整備している東河内杉の美林
適切に間引き(間伐)されているので、日の光が差し込み、木の根元には多様で豊かな生命の世界が展開する。
美しい緑をバックに開会のあいさつをする桝会長(ひめぶる)と中路氏(グリーン興産)
皆さんに理解していただきたい一番大切なことは地産地消で、地元の山の木を生活に密着させることで初めて、山は適切に保全され、山→川→海の自然の循環も健全になるということなのです。
そのような考え方をひめぶるはイベント開催において常にテーマに据えてきました。
そして、同じ考えを持つ、山の男たちの集団グリーン興産さんと一年前に巡り合うことができました。
昨年のひめぶるの森林見学会は、グリーン興産さんの全面的な協力があったから、開催することができたのです。
今回は、感謝と敬意をもって、一緒に共同で、開催することができました。
木こりは山で、大工は里で、それぞれ同じ考えのもとに仕事をするということが、いかに豊かでやりがいのあることか!
ひめぶるは今回のイベントで心の底から理解することができました。
お楽しみの重機の運転体験。
山の仕事をみんなで理解したうえで。
さて、イベントの始まりは、お楽しみの重機運転体験です。
山の手入れや仕事の様子、その後の製材など、木が製品になっていく過程を十分学んだうえで、楽しい重機体験をしました。
開会あいさつの後重機群が待っている近くの山へみんなで移動。
まずは、山の男集団“グリーン興産”が、伐倒木を切り倒す実演を見せてくれました。
くさびを打って、安全を確認し見事な早業でした。
木の命に感謝。無駄にしないようにと願いながらの作業です。
伐った木をプロセッサーというすごいマシンを使って加工します。
まず皮をむき、適切な長さに切りそろえます。
賢い機械なのです。
この木は何歳かな?
伐った木の年輪を数える子供たち。
まずは、木の命に感謝すること。
長い年月を、このようにして実感してくれてました。
言葉で教えるのは、難しいことでも、子供はちゃんと理解してくれます。
この子たちは、木を粗末に使うことはないでしょう。
今回イベントの意味が、既に見つかってとてもうれしかったのであります。
配布したパンフレット
山の木が育てること、加工すること、家にすること
そのプロセスを写真付きで説明しました。
賢い男の子!ちゃんと理解しようと目を通してくれました。
こんなにうれしいことはない。
伐ったばかりの木は、まだ水分をしっかり含んで濡れています。そして重たい。
山の水分をしっかり吸い上げて生きていたんだなと、実感できます。
そして子供たちみんなのお待ちかねの重機の操縦体験
エンジンの振動、おじさんの手のぬくもり
木のにおい、レバーの感覚
それらが混然一体となって、子供たちの
身体の記憶に刻まれていく。
ホントに楽しそうでした。
また、やろうね!
みんなで記念撮影をして、昼食
そして、いよいよ午後の部、「子供上棟式」へ
いつもながら感動的な、子供上棟式
空にまっすぐ伸びる、杉の林の前での爽快感!
午後からは、二交代制でグループを作り、子供上棟式と、のこぎり引き体験を交互で行いました。
天を突くような、美しい杉の林をバックに、大げさに言えば日本人の根源的風景を見るような思いがしました。
未来を担う子供たちがんばれ!と思わず、オッサンみんなが感慨に打たれたのでありました。
上棟式は皆で力を合わせて協力しなければできません。また、適切なリーダーシップも必要になります。子供たちは、誰に教わるわけでもなく、自然とそのように木を組み上げるのです。
そして今回は、その材料の木が、そのように育ってきたのか、脳裏に焼き付けてくれたと思います。
合間で子供たちは、「木育キャラバン」の木の玩具に興じていました。
木の玉プールは小さな女の子に大人気、組子式の積み木に男の子は夢中になりました。思ったよりも、このおもちゃはよくできていて、子供の集中力にびっくりしました。
まとめ
今回も、参加していただいた方々、特に子供さんたちやお母さま方から学ぶことも多く、大変勉強になりました。
ひめぶるは、テーマ設定に当たって、社会関係資本/コモンズという概念を大切にしてきました。
ちょっと難しい言葉ですが、簡単に言うと、地域全体の豊かさの源泉は、個人の所有物ではなく、個人が勝手に改変できるものではない。という考え方です。
そう考えると、山川海は、もちろん地域社会のコモンズですが、良質な農業、漁業、林業や地場産業ももちろん地域の豊かさを形成する要素ですからコモンズなわけです。
効率化、最適化を目指す方向性は、全国一律やグローバルという大づかみな概念に終始します。
しかし、地域固有の風土や気質、そしてその前提となるコモンズの存在が、やはり地域の豊かさの源泉であると考えるとき、私たちのイベントの方向性も自ずと定まっていくと考えています。
今回特に、山の保全に尽力されているグリーン興産さんとのコラボレーションを実現できた意味は非常に大きいと考えています。
コモンズはいろんな要素の循環を前提とする
コモンズは、単にその一ジャンルだけが成立すればいいというものではなく、有機的にすべて連関しています。つまり大切なのは循環というイメージです。
ですから、山の人と、里で地場産業を営む私たちが、ともにコモンズの保全を考えることができたことが大切な到達点だと考えています。今後のイベントにおいても、里で営利行為を営む私たちは、食育や海のことや、子育ての事や農業のことを皆さんとともにイベントを通じて考える際に、それ単独のことではなく、コモンズの連関ということを常に念頭に置くようにしたいと思います。
今後とも改良点や、ご意見などあれば、是非ご指導いただきたく、よろしくお願いいたします。