第9回イベントレポート

EVENTS

2016年09月30日

第9回イベントレポート

昨年に続き、海のイベント! 今回も現役漁師の星尾国広さんにお世話になりました。姫路のキースリチャードです。

昨年は海開き直後の7月初旬に行った海のイベント「地元の海をもっと知りたい!」ですが、今年は思い切って8月最終土曜日に行いました。海水浴場の準備に忙しい時期を避けて、じっくり企画を組み上げることができました。

今年も、現役漁師さんの星尾国広さんにご協力いただきました。

星尾さんは、地元の漁協の役員をされていた方で、「育てる漁業」というキャッチフレーズのもと、地元の海の保全に尽力され続けている人です。未来型の国際基準「漁獲制限」や「サスティナブルな漁業」というテーマ。今は写真の趣味を生かして地元の小学生に姫路の海の生物多様性を教える特別授業もされている人です。赤銅色に日焼けした顔はちょっとイカツイですが、ほんとにやさしい人です。

それぞれのイベントは「循環」というテーマのもとですべてつながっている ということを表現していきたい。

ひめぶるは連続的に開催するイベントが単独で終わってしまうものではなく、そのそれぞれのイベントが、実は「循環」というイメージでつながっているのだということを、子供たちやお母さんたちに感じていただけるように心がけています。
たとえば、前回のイベントの地元の山も、今回の地元の海も、個人の所有物ではなく、地元の人たち共有の財産(社会共有資産=コモンズ)だということです。山の水が海に流れ込んで、それが雲になって、また山に雨を降らせて川になる。それぞれ単独では考えられないもので、「循環」という、大きな自然の豊かさのプラットフォームの上で考えて初めて、その大切さがわかるものだということです。

そして、その共有の財産を、ともに大切に考える人たちが、「新しいコミュニティー/共同体」だということです。

新しい豊かなコミュニティー/共同体について

かつては、同じ地域、半径○○mに住んでいる人をコミュニティーと呼んでいました。町内会などはその典型です。確かに地縁を大切にすることも重要なのですが、都市化が進んだ今の社会では、地縁コミュニティーはなかなかうまく機能しないこともあります。
様々な情報コミュニケーションの手段が発達した今の世の中では、共通のテーマと、何を大切にするか?を共有した人々の集まりが、従来の地縁に変わるコミュニティー/共同体 のエンジンになります。

ひめぶるでは、これからのイベントでも積極的に地域の豊かさと守るべきもの、子供たちに残していくべきものを「循環」という視点でとらえて、新しいコミュニティーの中継基地になるように、頑張っていきます。

ということで、今回の海のイベントも、同じテーマの上にあります。
それにしても、星尾さんの話によると、最近めっきり魚が減って、また、アサリなどの二枚貝も、昔はちょっと砂浜を掘るとすぐとれたのに、今はめっきりいなくなったという話をされます。
海の豊かさを取り戻すために、どうすればいいか?
実は、時間はそんなにありません。待ったなしなのです。

海のイベントも山のイベントも、「循環」という一つのテーマでつながっていると考えています。

まずは、地引網からスタートだ!みんなで海に入って、力いっぱい網を引け!

今年のイベントは、もっと積極的に海と触れ合おう!ということで、地引網を朝一番で段取りすることにしました。
朝一番の更にその前に、星尾さんのリーダーシップで網を仕込む作業があり、当日は朝6時からメンバーは海パン姿で集合しました。
 実は、日本中そうですが、いきなり網を引っ張って、わんさか魚が入っているような海はありません。だからあらかじめ魚を入れておくのです。もちろんその日泳いでいる魚やカニもかかるのですがそれではみんな満足しませんから。

ということで、生きのいい魚を更に更に、その前に用意してという段取りが必要になります。つまり夜中に漁に出るということです。

そして、なんと!そのことを星尾さんは当日一番初めに参加者の皆さんにばらしてしまいました。 うあー言うてもたーっ! 全く正直なおじさんです。
でも、昔はほんとにいろんな魚やタコやエビが網に入ったそうで、一同 ちょっと考えさせられました。

それでも、実際みんなで網を引っ張り始めると、臨場感満点です。
一体何が入っているのか、子供たちも待ちきれない様子です。

みんなで元気に網を引く。
お母さん!写メしてないで引っ張ってよー

網にかかった魚は暴れまわります。子供たちも興味津々
そして、身体全体でさかなと格闘し始めました。

予想外にワタリガニやコアジがかかっていて、
なかなか大漁。

魚の躍動感の余韻冷めやらず、子供たちは砂を掘り始めていろんな生き物を捕まえだした。

地引網の海の幸をプラケースに移して、一旦地引網は終了。
「もっとやりたい!」子供たちの野生のDNAが目を覚まし始めます。
これは「自然からの宿題」だからやらせてあげないといけません。
みんないきなり白浜海岸の砂の中を目を凝らして観察し始めました。
よく見るといろんな生き物がいるんだね。獲ったどー!
地引網は、海への見方を少し広げる良いきっかけになりました。
早朝段取り、大変だったけど頑張ってよかった!ひめぶるメンバーもうれしそうです。

タッチプール、タコつかみ そのあと手でタコをさばく
昨年に比べ、明らかにワイルドな子供たち。

アー面白かったっ と言いながら子供たちが海から戻ってきて恒例のタッチプールの時間です。
これも星尾さんが、前から用意しておいてくれた、いろんな魚やタコが、大きめのプラボックスの中を泳いでいます。
今年は、お昼ご飯にバーベキューをやろうと企画しているので去年より大きめのマダコがたくさん泳いでいます。

実際 大きなマダコをつかむのは、大人でもちょっと抵抗があるのですが、海から帰った子供たちは、ごく自然にタコをつかみ始めました。
つかんで観察することをひとしきりやり終えて、星尾さんに習ってそのタコを素手でさばき始めました。

まず、玉ねぎが入っていた赤い網袋にタコを入れ、更に一握りの塩を入れ、タコを塩もみします。網目がちょうどよくタコのぬめりを取ってくれるのです。お母さんたちも感心することしきりとても簡単にぬめりとりができます。

次に、タコの頭の部分の皮をひっくり返して、卵と内臓をとりのぞきます。この時、さすがのタコも暴れまわるので、少し気が引ける感じがするのですが、子供たちは次々に真剣な表情で手さばきに挑戦していました。杉ちゃんではありませんが、ワイルドだろ?

そこまで終わるとメンバーが用意したまな板のところに持って行って、細かく切ってもらいます。
その間に炭火がカンカンに起きておりまして、早速串にさして炭火焼にしました。 これはお世辞抜きにうまかった。タコもやはり鮮度ですね!子供もパクパク。みんなタコが好きになりました。
タコさんたちに感謝、感謝です。

スズキの子をつかむ男の子
ぴくぴく 命を指先で感じる。

勇気を出してタコをつかむ男の子
重い~ お父さん!はよ写真とってーなー

星尾さんに手でタコをさばく方法を教わる子供たち。
真剣そのもの。

これ何ちゅう魚~?

自分でタコをさばいてみる。お母さん手伝って~

女の子もタコツカミ
ぬめぬめして気持ちいい~

お昼ご飯の時間。海で食べるご飯はおいしいね!

今年も地元の天晴水産(あっぱれ)さんにご協力いただいて名物のシラス丼をみんなでいただきました。
おかずには、先ほどさばいたタコと地引網の魚を炭火で焼いたバーベキュー。 海の幸に感謝しながら、子供たちは「お魚っておいしいね」と満足そう。
そう言ってくれるだけでオッチャン達はやりがい感じるんです。

楽しい昼食の風景
テントとブルーシートも準備しました。

うーん シラスごはん
おいしい~。

自分が手でさばいた生きたタコを
炭火で焼いて食う。
野生児である。
そして見る見るうちに完食。

星尾さんに地元の海の今昔。そして生物多様性を教わる

お昼ご飯の後は、全体を二つのグループに分けて、
A班は星尾さんの海の教室
B班はスキムボード体験
を順番で楽しみました。

星尾さんが撮りためていた、海中生物の写真。
実にいろんな小さき者たちが、海には懸命に生きている。
しかし、環境が損なわれつつあるという現実。
淡々とした語り口には、威勢のいいメッセージはありませんが、しみじみ海を保全する大切さを一同感じ取るのでありました。

スケールアップしたスキムボード体験 ほんとに楽しい。

最初はとたん板の上で練習。
そのあと、水を張った擬似コースの上でやってみる。これはリアルな感覚です。

一般のサーフボードよりもかなり小ぶりなスキムボード。

これを持って砂浜から波に向かってかけていき、波打ち際を滑っていきながら向い合せに波に乗っていく、このスキムボードの日本でのメッカが、実はご当地白浜海岸なんです。

ココには、プロスキムボーダー大牧さんのお店があり、多くの若者が日夜練習に打ち込んでいます。
手軽に入り込めますから、是非試してみてください。

ひめぶるのイベントでは、昨年に続き、ご協力いただきました。小さな子供やお母さんまで、思い思いに楽しめます。
この日も、子供たちは夢中になって何度もチャレンジしていました。板一枚で、大自然と対話する世界。競技系の学校スポーツにはない、素敵な世界です。

子供たちは、身体全体で海と対話する方法を、少しずつ、
しかし確実に覚えていきます。
この機会がもっと増えればいいと思いました。

最後は全員で砂浜清掃 ビーチクリーン

イベントの最後は、いつもの通り、みんなで海浜清掃/ビーチクリーンをやりました。

夏休みの終わりなので、砂浜には花火の残骸やら炭火の残りなど様々な心ない人々のごみが落ちていました。

ビーチクリーンをやりながら、皆それぞれ自分への戒めとしていました。

自然と自由奔放に触れ合う感性と、公共性を大切にするわきまえ。それをバランスよく教えていくこと。
その大切さを改めて実感したのでありました。

みなさん! お疲れ様でした。また来年もここで逢いましょうね!

まとめ


今回も、参加していただいた方々、特に子供さんたちやお母さま方から学ぶことも多く、大変勉強になりました。

ひめぶるは、テーマ設定に当たって、社会関係資本/コモンズという概念を大切にしてきました。
ちょっと難しい言葉ですが、簡単に言うと、地域全体の豊かさの源泉は、個人の所有物ではなく、個人が勝手に改変できるものではない。という考え方です。
そう考えると、山川海は、もちろん地域社会のコモンズですが、
良質な農業、漁業、林業や地場産業ももちろん地域の豊かさを形成する要素ですからコモンズなわけです。

効率化、最適化のみを目指す方向性は、全国一律やグローバルという大づかみな概念に終始します。
しかし、地域固有の風土や気質、そしてその前提となるコモンズの存在が、やはり地域の豊かさの源泉であると考えるとき、私たちのイベントの方向性も 自ずと定まっていくと考えています。

コモンズはいろんな要素の循環を前提とする

コモンズは、単にその一ジャンルだけが成立すればいいというものではなく、有機的にすべて連関しています。つまり大切なのは循環というイメージです。
ですから、海の人と山の人と、里で地場産業を営む私たちが、ともにコモンズの保全を考えることができることが大切な到達点だと考えています。今後のイベントにおいても、里で営利行為を営む私たちは、食育や海のこと山のこと、子育ての事や農業のことを皆さんとともにイベントを通じて考える際に、それ単独のことではなく、コモンズの連関ということを常に念頭に置くようにしたいと思います。
今後とも 改良点や、ご意見などあれば、是非ご指導いただきたく、よろしくお願いいたします。