第4回イベントのレポート

EVENTS

2015年07月25日

第4回イベントのレポート

老人ホームで子供上棟式

地場工務店が接着剤になって、街の人と子供たちのエネルギーを共有する企画

6月13日(土)快晴梅雨空の合間を縫って絶好のコンディションの下、ひめぶるの第4回イベント「子供上棟式」@特養ホーム“揖保の郷”を行いました。
木造建築では、建物の骨格を組み上げるこの日を「棟上げ」と呼んで、特別の晴れの日として設定する伝統があります。建物の一番上についている「棟木」を青空高く吊り上げて、組み上げた柱と梁に据え付ける儀式です。建築はどんな作業もそうですが、一人の力ではできません。携わる者それぞれが、力を合わせて、1+1=3になるよう協力することが大切なのです。その醍醐味を子供たちに体験してもらおうという趣旨です。
ひめぶるは、もともと、地元の良さを地場工務店5社が、協力し合って再発見していこう!という趣旨で結成された連合体です。だから、建築の儀式を子供に伝えるだけでも十分素晴らしいのだけれど、そのエネルギーを街の人と共有したいを考えました。
そこで、今回は、特別養護老人ホーム揖保の郷さんにご協力いただき、人生の大先輩である老人ホームのお年寄りに、そのエネルギーを共有していただこうという企画になりました。全国でも例がない、このような慰問の形。揖保の郷の側でも、危険はないか?お年寄りが興味を持つか?いろいろ心配がありました。でも、間を取り持っていただいた、
福祉住環境コーディネーターの神尾洋一さんと揖保の郷の繁畑施設長さんのご尽力で、このマッチング企画の実現にこぎつけることができました。
イベント担当の㈱身野建設身野社長のあいさつのあと、子供たちは初めてかぶるヘルメットのあごひもをしっかり締めて、位置につきました。
神社や仏閣など、伝統的な木造建築を数多く手がける、ひめぶるメンバーの大松建設の棟梁が、丁寧に、やさしく、子供たちに木の組み方と手順を説明してくれました。
さあ、いよいよスタートです。

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イベント担当(株)身野建設 身野社長の開会の辞、ちょっと怖い。でもやさしい人。

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初めてかぶるヘルメット。一番上までのぼったるぞ!

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 大工の棟梁の説明を聞く真剣な表情の子供たち。大人の話を聞くのが上手。

さあ、木を組み上げるぞ!子供たちのエネルギーと好奇心が全開!

まずは、一番下の段の土台を組んでいきます。木にはあらかじめ、棟梁が「ほぞ」や「仕口」と呼ばれる加工をしてくれています。レゴブロックを組み立てる要領で、子供たちは木を差し込んで、渡された「木槌」で勢いよく叩くのですが、なかなかうまく入りません。そこで棟梁が説明します。「一人でやろうとしてもうまくいかないぞ。
右の人と左の人が、目を見つめあって、息を合わせて、セーノで同時に木を組まないとだめなんだよ。」そのうち、子供たちは要領を飲み込んで、セーノの掛け声をひとりでに掛け合うようになりました。「息を合わせる」この体験ができれば、上棟式の企画はすでに大成功なのです。子供たちは協力し合うことの気持ちよさを体全体で感じ始めています。

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棟梁があらかじめ作っておいてくれた、子供上棟式キット釘やビスを使わない、本格的な木組み。森林見学会でお世話になった、宍粟の山の木を使っています。

 

相生市「中央ペーロン少年団」の子供たち。子供らしい元気と、礼儀正しさがすばらしい!

今回の企画に参加してくれた子供たちは、相生市の「中央ペーロン少年団」の子供たちです。
有名な相生のペーロン祭りをこれから担っていく少年たちです。ペーロンを漕いで、近くの無人島(お椀島)に行ったり、山に入ったりと、自分で木を組み上げて家を作る訓練の一環としてみんなで参加してくれました。
子供たちの揃いのTシャツの背中には「思いやりと命の大切さ」と染め抜いてありました。どんなことにでも感謝して生きていく、礼節のある生活態度。素晴らしい地元の子育て団体だと思います。
舟をこぐときと同じ、みんなで息を合わせなければ、うまくいかない。子供たちの飲み込みはとても早かったのです。

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最初は土台を組み上げるところから始めます。やってみるとなかなか難しい。

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企画の実現に協力していただいた、神尾さんと繁畑施設長。

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やっていくうちに、右と左、上と下それぞれ協力し合って、息を合わせて木を差し込むことがわかってくる。

エネルギーが伝わっていく瞬間上棟式の本当の姿を見た思いがする。

夢中になって木を組み上げる子供たちの元気な姿に、最初は部屋の中で引っ込み思案だったお年寄りも、どしどし庭に出てきて、声を上げて応援してくれるようになりました。
子供たちの協力し合うエネルギーが、お年寄りに伝わっていくのが見ていてわかります。
この日は、暑い日で炎天下になったため、少し心配して、そろそろ中に入りますか?と施設の人が声をかけても、皆「何のこれしき」という顔をしています。
上棟式、いわゆる「建前」、「棟上げ」の儀式は、20~30年前までは、方々で行われていました。協力し合う職人、大工の姿を見ながら、近所中の人がエネルギーを共有しあう、村や街の小さなイベント。それは、ステイタスの誇示では決してない、街を元気にする人々の知恵だったのです。
声を上げて子供たちを応援してくれているお年寄りを見ながら、ひめぶる一同上棟式の原点を見た思いがしました。

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要領をすぐに会得した子供たちはどんどん木を組み上げていく。

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お年寄りたちも、炎天下、一生懸命応援していただいた。

そして、いよいよ上棟!
子供たち表情は、さわやかな達成感に満たされていた。

2階まで、柱と梁を組み上げて、2階の床に板を張って、みんな2階に上ります。
さあ、いよいよ一番長くて重い、「棟木」を上にあげる時が来ました。
上級生は下で、棟木を持ち上げて、上にいる小さな下級生に渡します。
棟上げのヒーローは、比較的学年の低い、中学年の子供が選ばれました。
一般には、我先に力の強いものが、一番目立つ面白いことをやりたがる傾向にあると思います。しかし、この「中央ペーロン少年団」の子供たちの価値観は、そうではありません。
上級生が、下級生が経験を積むための下支えを率先してするのです。それもごく普通に。本当の意味で協力し合うことの価値と清々しさを、この少年たちはすでに日ごろの訓練の中で知っているのです。見ていたものは皆、小さく胸を打たれました。

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最初は部屋の中で引っ込み思案だったお年寄りも、どんどん庭に出て応援してくれるようになりました。

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子供たちの無心な表情と、腰の入ったエネルギッシュな躍動感に、お年寄りも声を上げて応援し始める。

祝上棟みんなでイエーイ!面白かった、またやりたい。

日ごろ、家ではレゴブロックのような、ミニチュアでの組み立て遊びしかできないですが、
子供上棟式は、ほぼ実物大の木を組み上げていく面白さを、体全体で体験できました。
また、その大きさゆえの、友達とのコミュニケーション、協力の気持ちよさなど、とてもいい体験になったと思います。一方、お年寄りは、とても元気な表情になり、昔話を始める人もおり、人生を心地よく思っていただくことに、一瞬ですが寄与できたのではないかを思います。最後にみんなで記念撮影をしました。ほんとにいい思い出になりました。

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女の子も背伸びをして、一生懸命木槌をふるう。木がすっぽり収まった時の快感は得難い感覚。

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お年寄りも子供たちも一緒に記念撮影。イエーイ!

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上級生が、下から下級生に材料を渡してあげる。下級生が経験を積むことを上級生が下支えする。子供に教えられることも多かった。

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釘を打つのと違って、木組みで振るう木槌の感覚は独特の心地よさ。手の感覚は一生忘れないだろう。

カンナ掛け体験おもしろーい気持ちいい〜♪

上棟式企画は、二交代制でやりました。そこで待っている間、カンナ掛け体験とモルタル練体験をやりました。
大工の棟梁に、刃物を扱う諸注意を真剣に聞いてから、一人ずつ、檜の角材にカンナをかけてみる。大工さんがやると、スムーズで簡単そうに見えるのに、なかなかむずかしい。でもおもしろーい。そんな声が聞こえました。
切りくずは、檜の香りがして、とてもいい匂い、今日お風呂に入れて檜風呂にしたらいいよ。と大工さんに教わっていました。

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今回のイベントで、建て方キットの製作を担当してくれた寺社建築もこなす大松建設の松本専務と棟梁たち最後に子供たちが心から感謝を述べた。少し照れくさそう。

 

モルタル体験この手形を大人になってから見てね。

モルタル体験これもなかなか人気でした。左官屋さんの仕事です。
最初は砂とセメントを、水で練り上げるところから始めます。これもやってみるとなかなかうまく混ざらない。
それでも、ひめぶるメンバーの旭ホームズ桝社長の力を借りて、モルタルが出来上がりました。
そこで、銘々お皿にモルタルをもらって、まずは、鏝(こて)できれいに表面をならし、その上に手形をとって貝殻で飾り付けをしました。
このモルタル手形は、乾いてから、それぞれのお宅にお送りします。大人になって、自分の手がこんなに小さかったのかと思うでしょう。
いろんな思い出が、その時よみがえると思います。

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腰を入れて、子供たちにモルタルを練ってあげる旭ホームズ 桝社長

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神尾さんの「笑いヨガ」上棟式のエネルギーが笑い声に転化する。

上棟式の後、子供たちはお年寄りの部屋の中にお邪魔して、一緒に、神尾さんの「笑いヨガ」に興じました。
笑うことにより、心身がリラックスし、腹式呼吸が自然と体を健康にします。
いわば、ヨガの体操と呼吸法を組み合わせた運動法です。
理由なく笑うのですから、最初は、なかなか笑えないのですが、やっていくうちに、
心の鎧が取れてきて気が付くと大声で笑っています。「心が打ち解ける」とはこんな状態をいうのでしょう。
最初は緊張していた子供たちも、笑いヨガのおかげで、すっかりお年寄りと打ち解けて仲良くなることができました。
笑いに理由なんかいらないのかもしれませんね。

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ご自分も龍野市内でご両親を介護されている神尾さんのお人柄で、皆が打ち解けていく、不思議な空間。

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理由なく笑う。それを一番最初に理解したのは子供たちでした。ワ~ははははっ~

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女の子の手を握り締めて、やさしく話しかけるおばあさん。こんなことが、もっとたくさんあればいいのにな。

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元気なおばあさんは、男の子たちとすぐに仲良しになる。

地場工務店の原点を、子供たちとお年寄りに、改めて教わりました。

普段なかなかわからないことですが、特別養護老人ホームの毎日は、お年寄りの世話で大変です。人手不足も深刻です。そんな中、ちょっと変わり種の企画を持ち込んでも
なかなか、それに応じてくれる余裕は、本当はなかったと思います。
しかしながら、揖保の郷をご紹介いただいた笑いヨガの神尾さんのご尽力と、繁畑施設長さんはじめ、施設のヘルパーの方たちのご協力をいただき、この企画が成立したことを、心から感謝しております。
言葉や表情の豊かさはすでにないけれども、お年寄りたちはそれぞれ、胸に去来する思い出をかみしめて、真剣に子供たちの作業を応援してくれていることがわかりました。
また、子供たちも、お年寄りがそのように、真剣に見つめてくれていることを感じながら、木を組み上げていたものと思います。
「心のやりとり」「エネルギーの交流」なかなかいい言葉は見つかりませんが、人と人が、垣根を越えて、言葉ではなく理解しあえる環境、それが地域コミュニティーの良さだと思います。たとえばお祭りは、それを確認しあう時間であり、場であるのでしょう。
個人の家の上棟式を、近所を巻き込んだイベントにするという「先人の知恵」も、地域を元気にするエネルギーの世代間共有の上で、大切に維持されていたものだろうと思います。
ひめぶるは、地場工務店の存在意義を再構築しようという目的で、5社の工務店が集まったグループです。今回、子供たちとお年寄りの接着剤になれたということ、それこそが、その存在意義のヒントだと、教えられました。
西播磨に住む豊かさを、様々な地場で努力されている方々との交流を通じて、再発見していくよう、今後とも、学びのイベントを企画しようと思います。
今後とも、よろしくお願いいたします。

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