第7回イベントレポート

EVENTS

2016年02月23日

第7回イベントレポート

老舗味噌店おかみさんの味噌作り教室


開催場所:2016年1月23日(土)
場所;小松屋(姫路市白浜町甲568)


創業130年以上の老舗味噌店「小松屋」さんに集合! 昨年の海のイベントからの念願かなって、うれしいイベントです!


昨年7月、ひめぶるでは海のイベント「地元の海をもっと知りたい」を開催しました。現役漁師さんの星尾国広さんに、姫路の海の豊かさや
今の問題点などをお聞きし、子供たちには海中生物のタッチプールなども取り入れた楽しいイベントでした。
せっかく地元の海の話なので、昼食は海で取れたばかりの魚を子供たちに食べさせてあげたい。そのような私たちの希望にご協力していただいたのが、白浜町の老舗味噌屋さん「小松屋さん」のご夫婦です。
ほとんどボランティアで、地元の魚のあら汁(味噌仕立て)を作ってふるまってくれました。子供たちもほんとにおいしそうに食べていました。
その時のお味噌や甘酒があまりにおいしく、またおかみさんのお話があまりに心に残ったので、ひめぶるはおかみさんの味噌作り教室を是非にとおねがいしていました。このたび、念願かなって、やっと開催にこぎつけたのです。ほんとにうれしいことなのです。

風情ある白浜町の街道筋にある、小松屋さんの店舗。明治10年創業のオーラが漂う。

小津安二郎の名画「東京物語」に出てくるような、小松屋さん横の路地。

小松屋さんの店先に展示してある、地元の版画家岩田健三郎さんの作品。味噌汁のある生活の穏やかな豊かさをしみじみ感じる。


無添加・天然醸造」の味噌、それはむしろシンプルで当たり前のもの。しかし巷では、時間をお金に換えるため、添加物だらけの商品が出回っている。それは、建築の世界でも同じことが言えると ひめぶる一同実感した。


このイベントは、担当の大松建設松本専務が日参して調整した甲斐もあって、流れがよくて気持ちいいイベントになりました。
朝9:0015組の参加者さんたちが、白浜町の小松屋さんの店の前に整然と集合。
白浜町は、有名な「灘のけんか祭り」の松原八幡宮のお膝元。歴史と風情のある街です。神社前の街道筋に、小松屋さんの古き良きオーラを発するお店があります。
小松屋さんの店内は、味噌や糀だけではなく、様々なオーガニック食品のセレクトショップになっています。その店先で、まずはひめぶる会長の旭ホームズ桝社長のあいさつ。それに引き続き今回のイベント責任者の大松建設松本専務の説明がありました。松本専務は、宍粟で宮大工も務める工務店ですから、思わず小松屋さんのお店の無垢材の大梁の素晴らしさにも話が及びました。「いい建築もいいお味噌も、時間を惜しまない。そして極めてシンプルで安心である。」工務店連合である私たちにとって、食品の話は一見縁がないように思えるかもしれませんが、基本は皆一緒なのだということを、しみじみ実感できる話をしました。


おかみさんのお話しは、いきなり心にしみる。それは私たちが日々急ぎすぎているということ。


そして、いよいよおかみさんのお話、それは食品添加物のことでした。時代がますます効率化、最適化を求めるあまり、必要な時間や手間を端折るようになったということ。味噌や醤油の話で言えば、本来必要な発酵や熟成の時間を削って、添加物で風味をつけてごまかす、そのような商品があまりにも多いということでした。
味噌汁や醤油は毎日使う必需品です。その中に添加物が当たり前のように入っているということは、一年でなんと約3kgもの添加物を摂取していることになるのです。
子供たちの口に毎日入るものですから、本当に安心なもの。本来のものを選びたいものですよね。
改めてそのことを実感しました。

ひめぶるのイベント担当・大松建設の松本専務と小松屋のおかみさん。

素晴らしい小松屋店舗の天井と梁。手を抜かないで気持ちを込めたものは、余分な要素は何もない。そしてすごくシンプル。それは家も味噌もおなじである。


手塩にかけて、糀を育てるということ。


小松屋さんが手塩にかけて育てる美しき糀。まさにお米に咲いた花である。

糀を育てる入れ物である”せいろ“。明治時代から使い続けているものもある。

小松屋さんの味噌作りの最大の特徴は、糀(こうじ)を育てるところから始めるということ。今ではこの製法を続けている味噌屋は、姫路でも2店舗しかないそうです。
ところで・・・・

豆知識


【糀/こうじってなんだろう…?】


日本酒や味噌、醤油、みりん、酢など、日本で古くから使われてきた調味料は、ほとんどが麹を使った発酵食品です。麹は、主に蒸した米や麦、大豆などの穀類に麹菌を加えて繁殖させたもので、その麹菌の酵素が美味しい発酵食品を生み出します。麹は日本の食文化を支える縁の下の力持ちなのです。
麹菌は、麹カビともいわれるカビの仲間。味噌作りや日本の多くの調味料や日本酒の醸造に使われるのは、「黄麹菌」(学名はアスペルギルス・オリゼー)という加熱した穀類に生えやすいカビです。このカビを蒸した米に繁殖させたものが米麹です。麹カビは、私たちの暮らしに欠かせない大切なカビなのです。
カビを用いた発酵食品は、東アジアから東南アジアなどにもありますが、麹菌を使うのは日本だけ。麹菌が生息できるのは、適度な温度と湿度がある地域だけだからです。温暖多湿な日本の気候風土がとても適しているカビなのです。
こうじを作る元になるのが「種菌」です。種のことを「もやし」と言い、種菌を専門につくる会社を業界では「もやし屋」と呼んでいます。『もやしもん』というマンガで一躍有名になりました。もやし屋は現在、全国で10社余り。中でも醸造用の全種類の種菌を作っているのは3社のみ。そのわずかな会社で日本中全ての醸造用種菌を作っているのです。


梅雨・土用を越して、最低8か月寝かせる。 これが味噌作りの合言葉。


小松屋さんでは、このように自家製の糀を栽培して、味噌だけでなく、甘酒や塩こうじとして販売しています。今回の味噌作り講習では、このこうじは、あらかじめ提供していただくのですが、「本来は、蒸したお米の上に、糀菌を撒いて、花を咲かせる4日間の工程が、勝負なんですよ」とおかみさんは説明してくれました。
この、アスペルギルス・オリゼ/糀菌が、柔らかく茹でた大豆を分解し、発酵し、身体にいい酵素満点のお味噌になるまでには「梅雨と土用を越して8か月の期間がかかります。」とおかみさんは強調して説明しました。期間の長さというよりも、湿気の多い気候やうだるような暑さという四季の変化を経過することが、オリゼがいい酵素を作り出す条件なんだということです。
改めて、日本の四季の変化に感謝するのでありました。

基本になるご説明を、参加者一同真剣にお聞きして、
さあ、いよいよ味噌作りに取り掛かります。

日本の糀菌は、古くは室町時代くらいから、発酵に適したカビ菌を選別に選別を重ねて、代々種専門屋さん(もやし屋さん)が受けついてきたものです。ですから、空気中に漂っているカビ菌を使うわけではありません。
上の写真のように、ご飯を置いておくと、赤や黒などいろんな色のカビ菌が生えます。そこに椿の灰をかけると、不思議なことに緑のカビだけが生えます。これがアスペルギルス・オリゼです。
私たちの祖先は、なぜか、そのことに気が付き、長い年月をかけて、良質のオリゼを選別、培養してきたのです。
それが、私たちの食卓の味噌、醤油、みりん、酒などになっているのです。まさに日本の宝。それにしても不思議な世界です。

味噌作りプロセス

①小松屋さんが手塩にかけて育てた手作りこうじ

②こうじ掻き工程。  こうじを専用の樽に掻き落として、ぱらぱらになるまで、よくもみほぐす。
③ほぐれたこうじに、一定量の塩を入れてさらによく混ぜる。塩は、工業生成のものでなくミネラルが残った天然系の塩が望ましい。この日は伯方の塩。
④小松屋さんが蒸気で蒸しあげた大豆。北海道の大豆「とよまさり」
⑤家庭では大豆は茹でることでもいいが、硬さの目安は親指と小指で挟んでつぶれるくらいが最適。かなりやわらかい。
⑥適量ずつ、ビニール袋に入れて、ひたすら手でつぶす。だまが残らないように入念に。
味噌作りは、この工程が一番大切で、一番大変。みんな一生懸命つぶしている。
⑦大豆がみんなつぶれたら先ほどの米麹を混ぜ合わせるこれも万遍なく万遍なく。
⑧途中で少量の水を入れて、さらに混ぜ、出来るだけ丁寧にこねる。水は、先ほどのビニールに残った大豆を洗い流すようにすると、大豆の神様も喜んでくれる。
⑨万遍なく大豆と糀が混ぜ合わさったら、ハンバーグをこねる要領で、中の空気を抜いていく。右に左にキャッチボールをしながら桶に詰め込んでいき、仕上げは平らに均しておく。
⑩樽の淵などを安全な消毒液で入念にふき取り、雑菌やカビの繁殖を抑える。
⑪あらかじめ、ボール紙を樽の円形に合わせて切っておいて、ビニールを挟んでその上にかぶせ蓋をする。
⑫おかみさんが、すでに2か月経過したものを見せてくれました。発酵が進んで、うっすら水が出てきている。8か月の間、たまに見てあげて、余分な水分はふき取る。

この日の分量はこんな割合。いろいろ試してみてください。アレンジすることで「手前味噌」になりますね。

持ち帰られたら重しなどを置いて今から梅雨、土用を越して8ヶ月以上経ってからお召し上がりください。

PHOTO GALLERY

講習会風景、姫路の辰巳芳子

ママさんは、積極的におかみさんに質問。

真剣にメモを取る奥さんチーム。さすがベテラン主婦は、手つきも鮮やか。

子供上棟式でいつもお世話になっている、笑いヨガの神尾さんも参加してくれました。がんばってます。

茹でた大豆を試食これだけでも十分おいしい!

完成の満足感

味噌作りで夫婦円満

岩田健三郎版画味噌の仕込み

最後は小松屋の旦那さんが仕上げを手伝ってくれました。

最後の仕上げが大切ですよ


【小松屋おかみさん語録】


1、身土不二

2、宮沢賢治の味噌