天然塗料

COLUMN

2014年12月04日

天然塗料

Written by ひめぶる コーディネーター LDK玉田敦士

明治の時代以前は、日本人は糠(ぬか)で床や家具を磨いていたのです。

永い間、日本には、製品としての天然塗料というものがありませんした。もっぱら石油製品としてのペンキしかなかったのです。それでも100%天然塗料を求めようとすれば、ドイツ製の塗料などを使うしかありませんでした。なぜドイツには天然塗料があったかというと、それは消費者の側が作り出した塗料だからです。建材による学物質過敏症の問題を、消費者の運動がいち早く問題にして、建材の環境基準を国に要求しました。そのムーブメントの中で、数社の天然塗料メーカーが100%の天然塗料を開発するに至ったのです。
日本では4スターというホルムアルデヒドの基準がありますが、これは国土交通省がドイツに習って決めた基準です。子供を育てる消費者の側が、要求した基準ではありませんでした。お上が上から決めてくれたのです。
そのような状況のなかで、米ぬかの天然塗料”キヌカ”は、待望の国産天然塗料。キヌカは100%、米の糠だけで作られた天然の塗料なのです。日本人が自主的に始めて作った天然塗料と言えるかもしれません。
「明治時代以前は、日本人は米ぬかで床や家具を磨いていたのです。」と日本キヌカの長田さんは教えてくれました。長田さんは、石川県小松市で「元気米」というお米を生産するベンチャー農家でもある人です。お米について知り尽くしている人です。「昔の人は、米糠を煎り布で包んだ糠袋で家じゅうを磨いていました。」それを私たちは今、ワックスなどという表現をして、わざわざ石油製品を使ったりしています。一見キヌカは、ワックスのように見えますが長田さんは違うと言います。「ワックスというのは、表面にかぶせる膜を作る材料のことです。キヌカは木材に浸みこんでいく。だからこれは塗料なのです。」
なるほど。透明の塗料というわけですね。長田さんはこの塗料を、無垢の国産木材に塗ってほしいという願いを込めて、天然塗料を言っています。だから色つきの製品を開発するつもりはないそうです。無垢の木と、米糠の塗料。本当の意味で、地に足の着いた住まいを作っていきたい。キヌカは大切なヒントを私たちに教えてくれているような気がします。

自然素材と言っても世界共通ではないはず。
風土に根差したものでなければ意味がない。

長田さんは、有機栽培の米作りもやっている人なので、食生活のことについても詳しい人です。実は米の油は無臭。小麦の油はにおいが強い。ということです。「パンと肉を食べている西洋の人は、においの文化なのです。だから塗料にもにおいがあるし、香料も好んで使う。でも米と魚の油で生きてきた日本人は、においには慣れていないかもしれません。」
衣食住というけれど、特に食と住の関係は深い。風土に根差した住まいという観点から考えるならば、米糠で作った塗料、是非使ってみたいと思いませんか?
これを機会に、食と住の関係、よく考えてみたい。そう思わせる力をこのキヌカという塗料は持っているのです。それは、お米の国の私たちに対してのことなのです。